復刊された弘道館記述義(岩波文庫)

岩波文庫リクエスト復刊36点41冊のなかから、藤田東湖弘道館記述義』(1940年2月16日 第1刷、2009年2月19日 第5刷発行)を購入しました。

亡き父のことがふと思い出されたからでした。父が戦前に使った教科書、簡野道明編『中等漢文』を中一のときに偶々手にし、石碑の写真とともに「弘道館記」を初めて知りました。当時の漢文知識(鳥啼程度)ではとても読めませんでしたが、日本漢文が多く収録されているのが印象的でした。

弘道館記」碑文の拓本は京都大学電子図書館でその画像をみることができますが、京大本の実物は見ていません。ある夏、九州某藩の史料調査で蔵から取り出して広げたときの鮮烈さ。歴史の重みを電子画像からは感じ取ることは難しいですね。

水戸藩の洋学は、一次資料がなかなか利用できませんが、とにかく極めて重要で、近い将来、本格的な研究がすすめば、幕末洋学史も書き換えねばならないでしょう。

山川菊江『覚書幕末の水戸藩』(やはり岩波文庫)は水戸藩儒青山家に生まれた山川が水戸藩知識人の人間模様を冷徹な目で描いた秀作でしたが、出版された直後に読んだ記憶をたどれば、機械論的な歴史観のため、歴史に翻弄される人間の苦悩が感じられない、という不満が残りました。

暇が出来たら、この2冊の岩波文庫を重ね読みしてみたいものです。